MOOOOD vol.1 編集長 磯田基徳の見つめる世界〜MODE〜

siki代表として6店舗を経営する、磯田基徳氏。
サロンに訪れるお客様への向き合い方、若手美容師たちへの思い、さらには美容業界の未来まで。その内面に秘める想いを語る。

-美容師は「究極の接客業」。常にお客様を喜ばせる思いを忘れない。

美容師を目指したのは、厳しかった高校生活への反動がきっかけでした。
オシャレな髪型に憧れるが、校則では禁止。
そんな世界にフラストレーションを感じ、自分のやりたいことを貫きたいと専門学校に入りました。
卒業後は目標だったサロンに入社、その後、自分のサロンをオープンすることになりました。

経験を積んだ今、
美容師とは「究極の接客業」だと感じます。
2~3時間の長い施術を受けに、たくさんのサロンの中から自分を選んできてくださる。その想いに応える時間を提供するべきだと考えています。

人の心をどう動かしていくか。
サロンワークでは、そこが大切です。

ヘアサロンは対面業務。常にリアルのお客様とふれあいます。
目の前のお客様を全力で喜ばせるため、細かな所まで気を配ります。

例えば会話の端々から得た情報から、お見送り時に「旅行楽しんできてくださいね」とお声がけすることもその一つ。
このサロンに来たら気持ちよく過ごせた。ステキな気持ちになれた。施術のクオリティだけでなく、そうした+αの心地よさの提供を大切にしています。
期待に応える技術に+αの時間と感動。
お客様に想像以上の喜びを届ける「究極の接客業」ですね。

-技術力だけでなく、美容師こそ人間力を。

美容業界でも技術のオンラインセミナーが増えた今は、気軽に学べる一方で、強烈な出会いが減っている気がします。
高度なカラーリングテクニックも、動画で簡単に知ることができ、見ても「こんなものか」で終わってしまう人も多いのではないでしょうか。
サロンの代表を務めていることもあり、そんな現状を警戒しています。
この業界は次から次へと新しいお店が生まれています。
それならば、どこかで差を作らなくてはいけません。僕自身がみんなと同じことをやっているのは嫌というタイプなのもありますが。僕は、そこに必要なのは人間力の高さだと考えます。

美容師の面白いところは、
「お客様」と直接、接することです。
美容師として技術力が高いことは素晴らしいですが、対お客様となると技術だけが全てではないんですよね。
例えば、技術力を顕示しすぎるとお客様の髪質を悪く言いながら「施術の難易度マックスでしたが、こんなにステキにしました」と伝えてしまいがちになります。
完成した時はお客様も喜ぶかもしれませんが、僕たちの施術って髪質を根幹から変えているわけではありません。数ヶ月で元通りです。
お客様はその髪質と付き合っていかなくてはならない。自分の髪質がダメだ、と思ったら悲しいですよね。だからサロンワークで承認欲求を満たすのはよくない。
若手スタッフには、ネガティブな言葉は使わないよう指導しています。お客様の想いをくんで寄り添っていく。
そんな人間性を備えていくべきだと思います。

-自分の力を高めるためには、インプットとアウトプットを繰り返す。

サロンワークを承認欲求の場に使うなとはいうものの「自分」が無い仕事もいけません。自信を持って「自分だけが作れる世界観」を創出できることが選ばれる美容師には必要です。
ただ、アウトプットばかりでは、いつか枯渇してしまいます。アウトプットには、上質なインプットが必ずセット。
その繰り返しが力になります。

sikiでは、サロン内に多様なラインナップを揃えた本棚を作りました。
インターネットを開くと、簡単に良い情報が見つかりますが、そこには感動がありません。
本・雑誌は違う。パラパラっとめくっていると急に衝撃を受けることがあります。「これいい!やってみたい」と創作意欲が湧いてくる。自分で探し取りに行く、そういった一歩負荷を掛けたインプットをしないと心は動きません。

全員がそう行動できるスタッフの揃うサロンであって欲しい。そのために業界のコンテストの参加はもちろん、サロン内でもスタイルオーディションを毎月開催しています。
サロン外のコンテストでは、昨年、経験3年目のスタッフが入賞しました。コンテストへの参加意欲の強い子でしたが、当日までカラーも衣装も悩み続け、涙するほどでした。
でも、その先に入賞があった。
彼女は、サロンワークだけでは出会えなかった感情の揺れ動きを経験しました。ストーリーですよね。心を動かしたことで、彼女はさらに成長したと思います。

良いインプットの先に、良いアウトプットがある。
このことは常に意識しています。